睡眠と子供の健全な成長、学習の関係を考察し実験したレポート

 眠りは、美しいこころを育み、英雄を、事業を完成する。反対にへたに眠ると、醜悪で、失敗ばかりする人間をつくる。平凡に眠れば平凡人ができるし、創造の母なる方の膝下に眠れば、思うことすべてかなう境地にたっする。眠りを植物にたとえるならば、根のはたらきである。緑の葉が繁り、美しい花が咲き、宝玉のような実が、たわわにみのるのも、根の働きなくしてできない。

睡眠と健康−とくにこどもの睡眠と成績の
問題について】は、

故松森善正氏が1986年に「新しい睡眠・寝具・健康管理の知恵」に掲載された

眠りの役割についての考察です。

同志社大学で心理学を専攻された氏は、日本の将来を担う子供たちの

健康と学習意欲と成績を考察実験し、この文にまとめられました。

ここで述べられている状況は、現在一層深刻になっているように思われます。

物があふれる社会にあって、子供たちは正しく育てられているのだろうか。

コンピューターゲーム機の弊害や、連続する受験勉強、塾通いを云々する前に、

親の目をもっと身近なことに向けてみようではないかと..


眠りは素晴しい宝庫

 私たちが、いかに良く眠るかによって、美しくもなり、壮健にもなり、スポーツに栄冠を、人生に勝利をするのである。日本人は眠りの条件として、木綿わたと、ウレタンフォームを敷いて眠るようになって、本当の良質の眠りを失った。子供たちの心身がくずれておかしくなり、大人は肩こりと腰痛に悩まされ、内臓を弱くしてしまった。世界一の経済社会を築きながら、ミクロネシヤ、ニュージランドのマオリ族にもはるかにおよぼない、後進性と劣悪な寝方をしているのではないかと思われる。

 ジョセフ・マーフィー博士が、"眠りながら成功する法"など、一連のシリーズで説いているように、潜在意識のもつ強烈な創造エネルギーが、人間の肉体と情神構造を、眠っているうちに、変貌させて、人の命運を、良くしたり、悪くしたり、驚くほど美しく強くしたりさせるからである

 一番悪い眠り方は、心配を背負ったまま、あるいは怒りや、憎しみを抱きしめたまま、眠りに入ることである。これではどんな理想条件の下で眠っても、翌朝、鬼のような、あるいは幽鬼のような影を負って目ざめ、心身に深い傷を負ったまま目ざめることになる。このような睡眠を続けるならば、顔は鬼のように変わり、心は地獄帰りの幽鬼に似てくる。

 反対に、翌朝、幼児のように、天上から帰還した神の子のように、美しく、気高く、目ざめる方法がある。それにはどんな苦しいこと、悲しいことがあっても、その日の終りを以て一日の臨終と心に決めて、一生の終りの臨終のように一夜の永眠、創造の慈母の膝下に、あるいは双手に抱かれるように、すべての重荷をかたわらに置いて、怒りと憎しみも捨てて、眠るのである。すると不思議なことに、目ざめる時、心配し、重荷だった問題の解決の糸口が、容易に見つかり、開けるものである。もし、一夜の眠りで足りなければ、もう一夜、同じようにして眠ることである。ついには自ら解決と成功の道が眠りの中に開けるのである。

 これは先人と聖賢の辿った道であった。心に悩みを抱きこんだままでは、決して最良の道は開かないことは、昔も今も変らない。この道を阻むものは、怒りと、怨みと、慢心である。自分にたのむのではなく、自分を捨て去った、深い潜在意識の中で、創造エネルギーによってのみ、可能であると知るべきである。戒心すべきは、心配、あるいは憎しみという重荷を背負ったまま眠る愚劣を繰り返さないことである。眠りの中で、天才が生れる。打ち出の小槌や、魔法のランプと呪文で、こつぜんと天才が出現するのではない。誰でも天から与えられた種子を潜在意識の底に抱いているのである。この小さな種子が、眠りの中で芽を出し、成長し、日中の練磨によって固まり形づくられる。眠りの中には、無限の宝庫がある。それを開く鍵は、正しい睡眠、すなわち正しいパターンの眠りのリズムが生れやすい物理的条件を欠かさないことである。

こどもの成長と睡眠の質

 子供の心とからだの異常が、拡がり、進行している。子供たちが自然に成長する過程で何かがさまたげ、歪めている。いくつかの原因が複合しているだろうが、その根底に何かがあるはずである。十五〜六世紀の大航海時代の船乗りたちは、永い航海に出る前に大きな不安をいだいた。海の黒死病の災厄である。一航海で必ず何人かの犠牲者がでるのであるから、必死で神に祈り、縁起をかついだ。1498年、バスコ・ダ・ガマのインド航路開発の航海では主要船員55名を失った。全身真っ黒になって苦痛の叫びをあげながら死んでゆく姿は、何かの呪いによるものだと思われた。黒死病(懐血病)が新鮮な野菜の欠乏によるもの、甘橘類の補給で簡単に解決することが一般にわかるまで、三百年の歳月がかかった。最初に勝ったのはオランダ人である。それはたんなるジンクスからだった。船長の懇意な金持の寡婦が、船出の時、数かごのオレンジ類の贈り物をくれた。不思議にその航海で、海の黒死病で死ぬ者が一人もでなかった。次の航海でも同様だった。そこでその金持の寡婦が、幸運の女神としてのジンクスが生れたのはいうまでもない。こうした偶然からオレンジ、レモン類の懐血病予防効果がわかった。この発見がオランダ人の航海の士気を高め、海運業を成功に導き、強大になっていったといわれている。70年後スペインから独立し、今のインドネシアを領有、日本との貿易戦争にも当時強大だったスペインに勝ち得た。懐血病の災厄をただ神に祈るだけのスペイン人と、繰りかえされる偶然からビタミンCを多量に含有する甘橘類の効果を発見したオランダ人との対照的な運命である。

 今日の子供たちの心身の"おかしさ"--心身症解決の道は、睡眠条件の改革によって60%以上の確率で解決可能と思われる。私たちは15年間、手さぐりで実験を重ねてきた。人間が生きる基盤として眠りがある。"寝る子は育つ"と昔から言われるように、睡眠中の深い、ステージ4の状態と、これに反応して対照的に表われるレム睡眠の中で分泌されるホルモンが、子供も大人も欠くことのできない発育と疲労回復への条件である。たとえば、睡眠不足の翌日、試験にのぞんだとしたら思うような点がとれないだろうし、事務をとればミスをおかし、自動車の運転をした場合、運転を誤って死を招く危険さえある。しかし、毎晩の睡眠が少しつつ、例えば3%づつ、効率を失しない続けるとするならぽ、その集積が成長ホルモンの異常分泌、効率低下を招いて、子供の心身を蝕ばんでゆくことが考えられる。心身症の原因が睡眠の効率低下にあるのではないかと考えて、早速、睡眠の条件を新しい構造のものに変える実験をくり返した。結果はどうか。子供の場合、わずか3週間から1ケ月で、相当の変化が観察された。

 第一に、朝の目ざめがハッキリして、今までぼんやりとしていたのがハキハキする。どこかの睡眠学者が、目ざめてから2〜3時間、頭脳も体も目ざめていないなどと発表しているが、子供も大人も、深い効率的な睡眠をとれば、もっと短時間で心身が覚醒して機敏に反応することがわかる。

 第二に、朝礼や式のとき、フラフラと倒れる子供が、小学五、六年生で、大体3週程度で倒れなくなる。約1ケ月後から平均的に運動能力がメキメキ発揮されてくるようになる。

 第三に、集中力が出てきて、それまでより少しづつ学課に興味がわいてくる。興味がわいてくるようになると、うまく誘導すれぽ学習に力が入るようになって、教室でも、自分の部屋でも、ぼんやりしたり、音楽ばかり聴いていたのが、読みモノをしたり、また一転してスポーツに意欲をだすようになる。

 第四に、2ケ月、3ケ月と進むうちに、本人の性向に従って、得意学課のテストに一段と上昇した成績を示す。この機をのがさずに刺戟を与えると、猛烈な勢いで学力上昇に向う集中力を発揮するようになる。

 第五に、姿勢が良くなり、発声に力が感ぜられ、声量、声の響き、跳躍力、走力、投擲力が増加してくるのが普通である。子供と比較して、大人の場合は、二十代、三十代は1ケ月半から2ケ月、四十代に入ると3ケ月以上反応がおくれる。しかし一様に、深い睡眠のとれた感覚を持ち、心身の壮快さと、集中力、持続力の変化を自覚する。面白いのは、肝臓の機能効率が高まるためか、二日酔いが消失することを誇らしげに語る人が多い。また神経性胃炎、慢性胃炎の人が、症状の軽快を自覚する人が多い。もう一つ著しい変化は、新しい寝具の変わり目に、「背中が痛くて眠れない」、「音が気になって眠れない」、「固くて眠れない」と文句を並べたてるが、肩こりや、腰痛を訴えた人が、大体年齢を一日に換算した日数後に、よくなった、治ったなどと言う。これは治ったのではなく、痛みが軽くなるからだ。

 人間誰でも、条件さえよけれぽ自然治癒力が働いて、自然に背骨の状態が回復し、痛みが薄らいでくるものである。一度この違いを経験すると、再び元のふとんやベッドでの睡眠に戻れない。なぜなら、あまりにもそれまでの眠りが浅く、効率の悪いものであったかを身をもって知るからである。思えば、弥生時代の麻とワラの睡眠用具の文化から、江戸時代に入って、木綿とわたで作った寝具に変わって以来三百年、湿度の高い風土の中で、吸湿性の高い木綿わたふとんが、贅沢な保温寝具として用いられて来た。戦前まで綿ふとんは貴重な質草で、徳川時代や明治時代には、金貸しが、借金のカタに病人のふとんをはいで持ち去る芝居があったものだ。綿のたくさん入った温い厚いふとんは、貧しい人たちの羨望の的であって、貧乏人はせんべいふとんにくるまって寝た。ところが子供の場合、やわらかい厚いふとんにくるまって育つ子は虚弱児に育ち、反対にせんべいふとんで育つ子が、子供は風の子といわれるほど、丈夫で頑健に育った。吸湿性が高く、皮膚呼吸効率の悪いわたの敷ふとんが、なぜか背筋の疲労回復をおくらせることはたしかである。その上に、柔らかいマットレスと綿ふとんを重ねて寝ることが、全国的に流行した。驚いたことに、マットレスの普及上昇カーブと正比例して、日本人の体力が落ち、腰痛患者が増え、子供たちの虚弱化が急力ーブを描いて進行した。これが原因である証拠に、新しい形式の、皮膚呼吸効率の良い、ある程度固くて安定感のある、新形式の寝具に代えると、不思議に思えるほど、前記の症状が消失するのである。

 世界中で、木綿わたふとんを厚く敷いて寝ている民族は日本人だけであること、それが日本人の睡眠効果を悪くしていること、ことに柔らかいマットレスの併用など、子供たちの発育と健康に致命的な影響を招来している元兇であるのに、寝具の開発はこの問題を見失ってしまった。肩こりや腰痛を良くする健康ふとんという呼び方である。50%か60%の効果は確かにあった。しかし、多くの原因と、症状の種類の多い腰痛を、単なる構造上の効果だけで全部解決できるわけがない。だから今日では、もっともらしくマグネットを装着したり、マイナスイオン発生器をつけたりして効果をうたうのが健康ふとんだと思われるようになったのである。新型の敷ふとんは、綿ふとんやマットレスのような睡眠効率の悪い形式から脱却して、良く深く眠るためのもの、とくに子供、青少年たちの心身症脱却のため改むべき眠りの形式として新しい生活様式に、とり入れなくてはならないものとして考えなくてはならない。良き深き効率的な睡眠は、子供も大人も、心と体のゆがみ、おかしさなどから解放してくれる。まず自分と、自分の子供、周辺から実験してみることである。眠りの条件変化で60%、あとの40%は努力で、すばらしい頭脳と、体力が自然に具わってくるのである。

赤ちゃんの敷ふとんを考える

 江戸時代の中期頃から、幼児の敷ふとんについて、母から娘へ、姑から嫁へと伝えられている禁戒があった。「赤ちゃんの敷ふとんは、古い打ち直しの綿を用いること。新しい綿を入れた敷ふとんに寝かせると背骨が曲がった子に育つから絶対にいけない。」... このような伝承がどうしてできたかを考えてみたい。日本に木綿文化が始まった頃、将軍家や大名、都市の富豪や地方の地主たちに子供が生れた時、それが男の子であったときなど、新しい綿の入った厚い立派な敷ふとんが用意されたに違いない。

 ところが、その敷ふとんに寝て育った子がみな虚弱児であって、たまに育っても、背骨が曲がってしまうことがわかった。今日の側わん症児である。それが江戸時代も終り頃の文化文政の頃になると、日本の木綿生産量が増大したので、地方の中位の地主や、中流の商家にまで綿ふとんが普及して行った。憧れの綿のふとんに手の届く時代になって、初児や初孫に立派な寝具を用意した結果が、風邪ばかり引く虚弱児になり、しかも背骨が曲がる事実に直面して、改めてこの禁戒が見直されることになった。また第2次世界大戦後、にわか成金がふえた時、同じ失敗がくりかえされたのである。

漫才に出てくる眠り方明暗

 昭和のはじめ頃、大阪の漫才に、横山エンタツというやせた男と、花菱アチャコという頑強な大男とのコンビがあった。細いエンタツが、大男のアチャコを横目で見さげたような顔をして、エンタツ 「俺は風邪を引てもうてナ」、 アチャコ 「アンタ、よう風邪ひくナ」、エンタツ 「俺は元来蒲柳(ほりゅう)のたちやからな、ええうちの生れやからな」 と言うと、アチャコがふくれツラで、「なら俺が風邪もひかんと元気で大きな体をしてるのが、貧乏人の子やちゅうことかいな、あほらし、何がええうちの子やちゅうのや。」 と怒る一場面が今でも目に浮ぶ。その頃の小学校では、貧しい家の子は薄着で鼻たらしながらも、風邪ひとつ引かぬ悪ガキ。厚着して首に眞綿の首巻きをして青白い子が、金持の子という図式が一般的であった。第一次大戦後の小学生がエンタツとアチャコだったので、こんなかけ合いが爆笑をよんだのだが、今日では通じない。昭和五十年代では、エンタツの言うところの、「ええうちの子」ばかりになってしまったので、子供たちの敷ふとんは柔らかく厚くなり、からだは大きくなったが、モヤシッ子ばかり。すぐ風邪を引いて、背骨は曲がり、朝礼の時には立くらみを起す。日本の社会は三百年余りの長い間、木綿わた敷ふとんが、子供の成長に非常に害のあるものであるという教訓に気づぎながら、わたが唯一の防寒寝具だったから、単なる禁戒だけに終って、それも今日では忘れかけている。弥生時代から近世まで、稲ワラと麻布寝具で通した後、木綿の寝具時代に入って、今日もなおその流れから脱し切れないでいるのである。(昨今の粘弾性の高いウレタンフォームの寝具もその流れのなかにある。人間はものではない。単位圧力を分散させるだけの、皮膚呼吸をさまたげるポリウレタンは、ロケットの加速される重力から機材をまもっても、人の体の仕組みにあうというものではない。一時ふんわりとして局部的に圧がかかりにくい感じでいいというのは、まさにふかふかの綿ふとんと同じ流れで素材が変わっただけといえよう。:e生活の種追記)

 木綿わた時代を迎えた江戸期の悲劇は、徳川将軍家の家系に打撃を与え、木綿文化の欄熟期ともいえる元禄時代には、宗教的迷信まで加わって、江戸市民は「畜生あわれみの令」という、実にばかげた禁制に苦しめられたのである。三代将軍家光の四男である五代綱吉の子供は、みな四才未満で夭折して後嗣が絶えようとしたからだ。家光の三男甲府宰相綱重の子の家宣に代わるのだが、事情があって新見正信という家臣の養子として、傍系に育った子である。しかしこの傍系二代は、わずか七年で終り、紀州家から八代吉宗が入って将軍職をつぐ。吉宗は周知のように、紀州家下級武士の娘の腹から生れ、幼児時代は板の間とこも、むしろの生活の中堅武士の家庭で育ったのである。十五代の将軍の中、五回子供が無く、傍系が継ぐ。江戸時代の三百諸侯、各地の豪商たち、ことごとくといっていいほど、禁戒を守らなかった家系は血統が断絶して、傍系がこれを継いでいる。エンタツの慢才のように、ええ家の子は弱く、夭折し、育たない。なぜなら、新しい綿が柔らかく厚く入った立派な絹ふとんが用いられたか、そうでなかったかが、明暗を分けたと考えられるからである。幼児の発育に致命的な欠陥のある木綿わた入り敷ふとんに寝て、子供ばかりでなく大人の睡眠も決して効率の良い眠りをもたらさないはずなのに、今日の日本の社会は続弥生時代の寝具から脱却しないのである。

 このような母から娘へ伝えられた言い伝えが今、全国にどのように残っているか、各地の婦人達の集会で公やけにアンケートを集めた結果は、下図の通りである。表の中で目立つのは松本と高崎が異常に高いことである。両市共江戸時代末期から明治大正にかけて絹糸の産地として現金収入の高い地域特性があり、現金収入が高い標準にあったため、綿の購入が安易であり、従って禁戒を生む失敗の実例が多かったと想像出来る。

札幌市
仙台市
石巻市
金沢市
松本市
浜松市
2.6%
2.8%
3.4%
6.5%
28.7%
2.4%
盛岡市
山形市
二本松市
岐阜市
広島市
高松市
2.1%
2.8%
2.2%
3.6%
3.3%
2.7%
郡山市
宇都宮市
高崎市
徳島市
福井市
3.9%
3.2%
37.7%
2.2%
4.1%

子供の睡眠問題奮闘記

 大人の腰痛や肩こりの体質改善に効果ありと宣伝された健康ふとんの販売に携る人たちは、ふとん自身が有難いものの、本体のごとく宣伝したいのだろうが、実は日本人があたりまえだと思っている綿の敷ふとんが、構造と材質の上から腰痛や肩こりを起しやすい欠陥睡眠の条件を具備しているのであって、中国式の竹ベッドを模して、ポリエチレンを竹の形に丸く巻いて、それを並べて、吸湿性をなくし、適当な安定性のある固さと丸さで、皮膚呼吸の効率と、潜在意識の安心感を誘うように考えられた構造のふとんが、人間本来の自然治癒力、回復力を高める結果、深いステージの眠りを効果的にとれるようにするのである。この深い睡眠のステージの時に、今日の医学界でいう成長ホルモン、各臓器や器官の新陳代謝を誘発する各種ホルモンが分泌され、その効率を高める。その結果として、腰痛、肩こりや各種の痛みが消失する。このような体内の神秘的な営みが行なわれているのが、良き睡眠であるはずである。とすれば、子供たちの今日問題とされている姿勢の悪いこと、朝のめざめの悪いこと、朝あくびばかりしていること、朝礼の時目まいがして倒れること、集中力を欠いて授業をぼんやり聞いていること、校庭で遊びもせずに坐り込んでいること、これら今日の子供たちの"おかしさ"を、新型の構造のふとんに変えることで解消できないだろうか。実際の試みとして、ここ数年間にわたって何百人の子供にためしてもらった。結果は簡単に変化することがわかる。一つずつ順を追って大要を回想してみたいと思う。

朝礼で倒れる子は十年前から

 第一回の実験は十年前、宮城県石巻市の中学一年生の男の子であった。その子の母からの提案として試みてみた。前年の小学校六年生の時、健康優良児として表彰されたのに、中学に入ってから、式の日に学年を代表して答辞を読む予定で立っていた時、突然目の前が暗くなって倒れてしまった。本人も、学校側も、新しい学校での行事であるから、緊張のあまり倒れたのであろうと思った。ところが、次の機会にも、朝礼の時間にも倒れるようになった。新型のふとんに変えてみた。実験は見事に成功した。二週間で朝礼で倒れなくなったばかりか、学校の成績が上がり、今まで得意でなかった体育、とくに走力に自信を持つように変わった。十年前は朝礼で倒れる子供はめずらしかった。今日では全国的に増加したのに、私の周辺の何百人といっても、ホンの一部の子供しか、この問題の解決をしていないのである。

大学受験生の実験成功

 次が学校の成績の悪い子の問題解決である。私の親しい友人の子供が大学受験を控えた高校三年になったばかりの時だった。友人夫婦は、共に国立の一流校出身なのに、その長男である高校生は、都立高校で五百三十人中四百八十番の低空飛行で二年を終ったのである。これでは国立大学はおろか、高校卒業もやっとの状態であった。実情をきいてみると、独立の勉強部屋、ソフトなスプリングクッションのマットレスのベッド、ステレオ、ピアノ、ギター、運動具、とくにスキーなど、いたれり尽せりの学生だった。高校入学後、ズルズルと成績が落ちているのである。私は友人夫妻と本人に言った。ただ一つを除いて何も変える必要はない。ステレオよし、ギターよし、ピアノよし、スポーツよし。唯一眠りの条件を変えることにしよう。植物の成長は土の質と根の張り方で変わるように、寝台の柔らかいマットの部分を取り去って、代りに新構造のマットに変える。それで睡眠の質が変化するはずである。深く眠れば、脳の状態も変化するはずだ。科学は実験である。どのように変化するか実験して見ようではないかと提案した。それは四月のはじめのことだった。

 五月末になって、再び友人宅を訪ずれて、かの落第候補生に面接した。まず本人の顔つきが変わっていた。彼が言うには、数日前、中間テストがあった。とくに数学の成績が相当良かった。五月になったある日の学校でその日の数学教師の話が、いつもとガラリと変って判り良く聴こえたと言う。その日帰宅して自分の部屋に入って教科書を開くと、何か新しい世界の書物に出会った感じがした。数という世界が生きて動いている感じであった、と言うのである。一学期末の成績が来た。成績は二百番近くであった。夏休み中に集中ゼミに参加。二学期に入り勉強が面白くなった。後の試験結果は学年中五十番台に入って、一流校受験のOKのサインが出た。こうしてこの子は父母と同じ国立大学へ入学出来たのである。もちろん、本人の努力は大変なものだったが、睡眠条件を良くすれば、隠れた能力が引き出せること。反対に条件が悪ければ、ちょうど渇いた土、痩せた土の上に植物が育たないように、条件の悪い眠りが頭脳の能力を閉鎖してしまって、努力しようという意欲さえも萎えてしまうのだと感じたのである。

小学生の算数の成績向上

 次にもう少し小さい子供の実験をしてみようと思って、富山県の黒部近郊の町の人に頼んで、主として小学生の眠り方を変えてみた。実験対象はとくに算数のできの悪い子にしぼってみた。二人、三と、親たちによく話して試してみた。程度の差こそあったが、いずれも算数に開眼した。ある教室で、今まで算数のできが悪い子が急にハキハキ手を上げて答えるようになったのをみて、少し前から同様の実験をしていた子が、ツカツカとその子に近づいて、「お前、ふとん取り替えたのか」と聴いたところ、「ヘエ、おまえもか!!」と答えたということだ。これに力をえて、方々で子供たちの、特に算数のできの悪い子に実験を試みたが、優等生に全員を変えることは不可能だったが、2から4に、3から4に、必ず上昇変化を描くのである。この話をすると、聴く人はみな、「ソンな馬鹿な!!」という顔をする。しかし深い睡眠をとった翌朝の心地良さ、頭のスッキリした時の、良い考えのまとまることから、睡眠の条件を変化させれば、子供の頭脳が効率的変化を遂げるのが当然ではないかと言えば、必ず納得してもらえた。何よりも実験すれぽ、必ず結果が出ることである。ただし、せっかく良い変化が出ているのに、遊びに夢中で、そちらに力をとられて勉強をさぼる子は、成績向上の差が小さいことはいうまでもないことである。

 さて、だとしたら、幼児の時から新型ふとんに眠った子は十年後、どのようになっているか、四国善通寺市の小学校五年生のA君の状態を調査して見た。全身しなやかなスプリング製のような感じの運動神経と筋肉質の体格。そしてIQ150以上、姉弟揃って、男女各全校一の高さで、注目されている生徒である。浜松市、浜北市の両方では、PTA有志で児童の成績上昇実験をしてもらった。広島県では受験生のための塾で実験を開始する準備が進められている。

 十年間に、何千人の子供たちが、睡眠条件改善による、成績向上実験に成功した。しかし、困ったことに、この話題は、各自の家庭だけに止められていて、噂にならない。公けの席で話をすると、必ず役員から、次の会で話さないようにと要請される。隣人や知己の子が成績上昇することを喜ばない利己主義の壁が、北海道から沖縄まで、不思議に万里の長城のようにのびている。

こどもの睡眠リズムのくずれと非行

 話かわって、"体育教育"1983年6月号に、高知大学教授、河添那俊氏が、"子供の非行"について研究発表されている中で、「深夜や、朝の目めざめ前のノンレム睡眠とレム睡眠のリズムをくずしていると考えられる。そうした眠りの状態は、早朝の眠りの中で分泌をはじめる下垂体ホルモンや副腎皮質ホルモンの分泌リズムをくずしていることも予想される。すると学習力、注意力の集中、やる気(動機づけの情動、気力)などが低下する。また、エネルギー代謝、体温、覚醒力なども低下する。こうした状態は、交感神経や、体性神経の興奮も弱くする。睡眠相遅延症候を生じてくると、松果体ホルモンの製造分泌も低下する。すると性的成長の促進、性的衝動の早期高揚、精神不安定と、不調和などが生じてくる。日常的には、そう状態、あるいはうつ状態をつくり易い。また交感神経の興奮性など、いくつかの要因と組み合わせると、狂暴性を発揮したり、ノイローゼに陥る要素となる。反社会的行為や、非社会的行為に陥りやすくなる」と指摘されているように、今日の子供たちの暴力行為の原因に、睡眠の条件悪化が、その根底にあることが明白である。

 広島県の社会教育に力を注いでいられる方は、学校及び家庭内暴力生徒を、睡眠条件の改革によって、どのように変化するかを、実験されている。新構造のマットによる実験で、親たちの表現の言葉をかりれば、精一杯丸々と膨れあがった風船玉が、萎んだように、急に変化した。今は、グループの制約から、いかにして脱出するかの問題だということである。

 まさに、眠りは、「生きる根の振り」、根底であり、基盤である。それを変えることによって根底から、子供も、青年も、大人も、男も女も、健全に、美しく、強く変化するのである。


    松森氏が「新型マット」とよばれるものは、開発者の越中屋さんが自らの闘病経験から
   看護婦の夫人とともに、じゅくそうを防止するために研究したふとんHRです。下で紹介
   しております。開発者は、これこそ「普通のふとん」であって、いわゆる健康ふとんなど
   ではないと、寝具の本来あるべき形をのべています。